夕飯を一緒に食べるために、蒼先生の部屋へ行く。



着くなり、後ろから、ぎゅって…抱きしめられた。


いつもより、力がこもっている。


こんな風に抱きしめられるの、初めてだった。



「梨香、ホントに心配…したんだよ。

叩いたりして、ゴメン。

距離置こうなんて言って、放ったらかしにして…ゴメン。

もう、絶対そんなコト言わない。

あんなに胸のつぶれるような思いするくらいなら、蛇の生殺しでも梨香に手出すの我慢してた方が…マシ。」


蒼先生は、私を抱きしめる腕に、さらに力をこめる。



苦しくて、痛いくらいだ…。


だけど蒼先生は、もっと苦しくて痛い思い…したよね?



「先生、私の方こそ…ごめんなさい。」



腕の中で、体の向きを変え、蒼先生と向き合った。



「梨香、こうして抱きしめるのと、キスは…許してくれる?」


私が頷くと、蒼先生はおでこにキスしてくれた。



あっ…ちょっと、今ガマンするって言ったばかりじゃない。


当たってるよぉ…。



「あの…先生…。」


私が顔を真っ赤にしていると


「仕方ないだろ?

好きな女と密着してるんだし…」


蒼先生も、顔を赤らめていた。





ご飯を食べながら、お喋りをする。


「何で、抜け出したんだ?」


「この近くの海で船の事故があったんですけど、母だけがこの辺りに眠っているんです。

ホントは抜け出すつもりはなかったんですが、ここまで来ると我慢できなくて、つい…。」


「言ってくれたら、付いて行ったのに…。」



蒼先生はそう言って、私の頭を撫でてくれた。