ある日、突然ガラガラと崩れさる幸せ。

それを身をもって実感したのはいつだっただろうか?

初恋の日から数年後のことだった。

その日は遥の16回目の誕生日の日。

休日だったこともあり、朝から西園寺家ではパーティーの用意でバタバタしていた。

夜にも遥の16歳のバースデーを祝うパーティーがあるのだが、そちらは遥の友人たちを全員招待することは出来ない。

招待されるのは西園寺家と縁の深い上流階級の方々と、取引先の方ばかり。

なので昼にも御祝会をすることになった。

こっちには遥と仲の良い友人たちが参加する。

夜にも参加する友人もいるが、遥は家柄で友人を作ったりしないので一般家庭の子もいるのだ。

招待状を出す時に遥が真っ先にあげた人物。

それが水島蓮。

彼だった。初めて会ってから既に10年近く経過していたが、実の兄弟のように仲が良く、そして遥が兄のようにも慕っていた人。

蓮は大学入学後半年してからアメリカに留学していてここ数年は会うことがなかった。

彼が帰国しなかったわけではないのだがお互いの時間が合わず、直接は会えていない。

たまにくれる電話とメールでの近況を知るくらいだった。

だから、遥の誕生日の時期に帰国するとメールで知らせてくれた時、遥は飛びあがらんばかりに喜んだ。

夜になれば会えるのだが、もっと一緒にいたい。

少しでも長くいたい。

そう思うのは恋心から。

自分の気持ちを伝えることは出来ないだけに兄と妹のような関係でもいいからとその関係にすがりついていた。

「あらあら。本当に遥は蓮君が好きなのね。」

そんな遥に母は笑みをこぼしては言うのだがしかし

「蓮君が何も言わないからってわがままを言ったらだめですよ。

蓮君だって忙しいのだから。」

と言うのも毎回のこと。

結局蓮を含め、7名ほど招待した御祝会は思い出に残るものとなる。