「こっちに来て。」
そういって遥を引っ張る蓮に遥はされるままになっていた。

「いい、ここにいて。絶対に離れないで。
車を持ってくるから。」

うんと言わない限り離さないと言うようにしっかりと手を握ってそういう蓮に遥は頷いた。

「絶対に離れないで。すぐに戻ってくるから。」
そういって心配そうに何度も後ろを振り向きながら車を取りに行った蓮を遥はボーっと見送っていた。

蓮の方を向いてはいても蓮のことは瞳に映ってはいない。

何も考えられなくて。

だが、蓮の姿が消えた瞬間、バッと方向転換すると蓮が出て行った反対側に走り出す。

そして、手をあげてタクシーに乗り込むと

「成城まで。」
そういって、

「早く出してください。早く!!」
そういって焦って運転手をせかす。

とにかく彼から逃げたかった。
だから彼から逃げだした。

タクシーが走りだすとホッとして俯く。

すると、今まで我慢していた涙がポタリ、ポタリと流れるのだった。

「お嬢様、どうなさったんですか?」
一人、早々戻ってきた遥に屋敷にいたメイドたちは驚いて。

「具合が悪かったから早々戻ってきたわ。もう休むわ。」
そういって早々に部屋に引っこんだ。

部屋に入り、ドアを閉めた途端、ヘナヘナと座り込む。

目の前には窓があり、月がベッドを照らしていて。

「どうして…なんで…」

まさか、昼間はあんなに幸せだったのに、こんなことになるなんて思わなかった。

どうにかベッドまで移動すると、ベッドわきのナイトテーブルには蓮からもらったスノードームが。

キラキラと光りながら雪が降る中で花が咲いていて…

「こんなっ!!こんなものもらってもっ!!」

瞬間的につかむと思いっきり投げて粉々に割ってしまいたいという衝動にかられる。

「出来ない…出来ないよ…うわぁぁぁぁぁ~!!!!!」

そうしたいのにそれが出来ない。
それが逆に辛くて遥は部屋で号泣していた。