夜の庭は幻想的で美しい。

ボーっと庭を眺めてる遥に幸翔は自分が着ていたタキシードを脱ぐと遥に

「風邪をひきそうなのでこれを…私が着ていたもので申し訳ないですが。」

といって肩からかける。

そんなふとした優しさに遥は

「ありがとうございます。でも…そうしたら幸翔さんが風邪をひいてしまいます。」

といって断ろうとする。

だが、幸翔は笑って

「大丈夫ですよ。これでも鍛えてるんです。

だから風邪なんてひきませんよ。」

といってそのまま羽織らせた。

目の前には沈丁花の花が咲いていて。

「遥さんは私以外の婚約者の方には…?」

そう聞かれ

「既にお会いしてます。」

と短く返答する。

そう、最後に会ったのが幸翔だった。

というか、遥の知り合い3人を除けばだ。

一人目の笠原颯太には幸翔さんと会う前に顔合わせしている。

が、一目見ただけで嫌悪感を覚え、断るつもりでいる。

そう、笠原颯太は甘やかされたいいとこのおぼっちゃん、という印象しかなく、それも女ったらしという話も入ってきている。

相手は自分を選ぶと信じて疑わず、それが態度にも出ていて嫌悪感が募ったのだ。

確かに自信を持つだけの容姿はしていた。

だが、容姿がよくても他がダメでは…

遥の様子をみて父もおそらく気付いただろう。

西園寺の関係者の二人は会わずともお互いを知っている。

遥が会いたいのは彼だけだ。

「幸翔さん、素敵な方だからこそ、伝えなければならないと思います。

私はあなたとお会いしてとてもいい人だと思いました。

婚約を前向きにという話もありがたいと思います。

私には好きな人がいます。

好きな人がいるのにあなたと婚約するのはあなたに対して失礼なことでしょう?

幸翔さんの方から断ってください。」

そういう遥に幸翔は

「そうですか。好きな人いるんですね。

でも、私たちが出逢ったのはつい先ほど。

すぐに結論を出されるのは時期尚早ではないですか?

もっと私を知ってから決めても遅くはないはず。

好きな人がいることは仕方のないことです。

人間、どこでどんな出逢いをして愛し合うかなんてわからないのですから

もしかしたら将来的にあなたから愛してもらえるかもしれないじゃないですか。

愛してもらえるように私も努力しますよ。」

そういう幸翔にますます好感がもてるのだった。