プスリとフォークを唐揚げに突き刺し、口へ運ぼうとしていたとき。
「奈々って彼氏おるの?」
有紗がニコニコと悪戯っぽい笑みを浮かべて訊いてきた。
『いないよー』
私も笑って返す。
実は彼氏なんて生まれてから一回も出来たことが無かった。友達には、いつもウブだとか何だと言われる。
「えー、いそうやと思ったのになぁ……。じゃあ、好きな人は?前の学校とかでおらんかったん?」
『……うーん』
好きな人……。
春人は“好きな人”に含めても良いのかな。
前の学校では無いけれど。
『いるよ』
「え、どんな人ー?」
『……優しくて、かっこよかった』
「“かった”?……あ、ごめん…、学校離れちゃってんなぁ……」
有紗が申し訳なさそうな表情をする。別に、有紗が思っているような事は無いのだけれど。
しかし、小さい頃の初恋の人を今も忘れられないでいるなんて何だか子供っぽい……と思われるのは嫌なので、言わないでおく。
少し気まずそうにしている有紗に私は、話題を変えるように聞き返した。

