『なに……?』
緊張した面持ちで振り返ると、春人は少し困ったように笑って言った。
「昨日のことやけど」
『………』
ああ、やっぱり。
身体が強張り、わたしは視線をさ迷わせた。
「……俺等、どっかで会ったっけ?……ごめん。考えてみたけど、全く憶えてないわ」
申し訳なさそうに後ろ頭を掻きながら言う春人。
またもや胸がチクリとする。
『……小さい頃から小2まで、近所に住んでた。幼稚園も小学校も一緒で仲良かったよ』
「そやった……?」
首を捻り思いだそうとしているけれど、やっぱり思い出しそうな気配は無かった。
「ごめん……俺、忘れっぽいんかな?
小さい頃の記憶あんまりなくて」
忘れっぽい?小さい頃の記憶があまりない?
けれど、何年もずっと一緒にいたわけで。
「忘れっぽい」という言葉で片付けられるほどのものなのだろうか。
『そっか、わかった。』
「……でも」
口角を上げ、先ほどの苦笑いとは違う優しい笑みを浮かべ、春人は言った。
「有紗の……いや、クラスメートとして、よろしくな」
『……うん』

