15分くらいして、教室の前まで戻ってきた。
もう教室には誰もいないだろう。
そう思いながら、有紗に続いて教室へ足を踏み入れた。
と。
誰もいないと思っていた教室の隅に、ポツンと人影。
窓のそばの机に浅く腰掛け窓の外を見ている男子がいた。
開けられた窓から教室の中に流れ込む穏やかな風に、側のカーテンと同じ動きで柔らかく揺られている髪。ミルクティー色のそれが、陽に照らされて眩しく輝いていた。
……あれは、
『は…』
「春人!」
しかしわたしがその名を口にするより早く、有紗が春人に向かって言った。
春人はその声に、顔を上げる。
「おー」
小さく返事をして、ゆるりと口角を上げ私たちに笑いかけた。
……いや、違う。
私たち、ではなく、有紗に。
「待っててくれたんっ」
そう言って有紗は、嬉しそうな表情で春人の下へ行く。春人の方も、机から立ち上がって有紗の方に数歩、近寄った。
『………』
親しみのこもった笑顔に、言葉。“友達”とも“クラスメート”とも違った雰囲気。
こんなの、まるで、付き合っているみたい……。

