思いついたように声を発し、突然ランドセルに付けていたクマのキーホルダーを外し出した春人。
何だろうと思いながらじっとその様子を見つめていると。
“はい”
手の平の上に乗せこちらに差し出してきたそれを、私は戸惑いながらも受け取った。
“こんやくゆびわの代わり。これで、いいやろ?”
ニッと子供らしい表情で笑う春人。
その笑顔につられ、私もへらっと笑ってしまった。
そしてその数ヶ月後に私は引っ越したのだ。
私はその時春人に貰ったクマのキーホルダーを、今も大切に持っていた。
これを持っていたらいつかきっと春人に会える気がするのだ。
(でも、やっぱり今日は会えなかったな……。)
世の中そんなに上手く出来てはいないのだと、再確認する。

