シンアイ

雑用はいつものことだし、ノートを運ぶだけなら大したことじゃない。本当は千里に手伝ってもらうのも申し訳ないくらい。

「これもだけど……」

チラッと手元のノートを見た後、言いにくそうに目線を逸らした。

「噂……とかさ」

「あ……」

その一言だけで十分だった。
噂なんてひとつしか考えられない。朝の一件が千里の耳にも入ったのだろう。

「もう千里も知ってるの?」

「うちのクラスでも女子が騒いでたからさ」

女子の情報網恐るべし。
噂なんだから広まるのは覚悟の上だったけど、本当に怖いのは噂の内容だ。どんな風に伝わったんだろう……。

「サヤ、ただの噂だよな?本当に御園蘇芳と付き合ってるとか……」

付き合ってる!?
そんな風に伝わってるの!?
ただ抱きつかれただけなのに付き合ってるだなんて!

「ないないない!御園くんにはからかわれてるだけ!反応が面白いとか言って絡んでくるの」

とりあえず全力で否定した。
というか、やっと否定の機会がきた!
私はこれを待っていたの。皆もこんな風に聞いてくれたらどんなに良かったか。やっぱり千里様様!

「だよな。サヤと御園って絶対合わないと思った」

私が感涙を流している横で千里はホッとしたように息をついた。

「あんまりしつこいようなら言えよ」

「うん」

と頷いたけど、そのうち飽きると思うから千里の手を煩わせることにはならないだろう。

周りから見たら千里は少々過保護らしい。いや、当事者から見ても過保護だと思う。私が頼り無さすぎて過保護になってしまったと言っても過言ではないけど。ものすごく助かってるのは事実なんだけど、いつまでも千里に甘えっぱなしって訳にもいかないよね。

よしっ!
御園蘇芳の件は自力で解決しよう!

と奮起したのだった。