さくら 【短編】

高3の春、桜が舞う校庭の桜の木の下で。

『桜の木の下には死体が埋まっている』

『え?』

散って舞う桜を見上げながら、唐突にそう言った。

『だから、桜はこんなにも美しく儚い』

『人の命みたいに?』

『・・はは、桜はおもしろいことを言うね』

どきっ、久しぶりに名前を呼ばれた。心臓が高鳴る。

『それじゃ、優希はどうしてだと思うの?』

困った顔をして、

『桜が美しいのは、人の死をずっとそばで見つめ続けたから』

『・・・・?』

『わかんない?』

『うん』


『ずっと、自分の木の下に死体を埋められて、その哀しみを知っているから、綺麗なんだよ』

『・・・やっぱ、よくわかんない』


そうだね。優希はそう笑って。