【完】愛の血−超勝手な吸血鬼




「ちょっ!」



言い返そうとしたあたしは、
その背中を追いかけるように走り出すと肌寒い風が、あたし達の間を通り過ぎる。



「おい、何立ち止まってんだよ」



呆れた顔で、
あたしを見下ろす椎名冬夜を見上げた。



「帰んだろ? 早くしろよな」



そう、呆れた顔が一瞬、
笑ったように見えたのは……気のせい?


その表情に、あたしの心臓は少し速さを増す。

何だろ……この気持ち。



ムカツク奴としか思っていなかった椎名冬夜が、不器用なだけかもって思った途端、なんだか急に可愛いって思えて仕方ない。


ちょっと心配されて、待っててもらえてただけで、こんな風に思っちゃうなんて……

あたしって本当、単純なのかもしれない。