「あー、ねぇ。
椎名君……男の子こっちに来なかった?」
ねっちこい声が辺りに響く。
本当まじうぜぇ。
ベラベラ喋ってねーで、早くキエロ。
つか、有賀仁奈、絶対俺がココにいるって言うなよ。
そんな事を思っていたら、有賀仁奈は
「あっちに行きましたけど」
って、
「言わなかったんだ?」
隠れていた俺が顔を出すと、有賀仁奈は困ったような照れたような複雑な顔をして色々と言い訳をしていた。
とりあえず、あの女が戻ってこないうちに帰ろう、そう歩き出したときだった。
「どうして逃げるの?」
後ろから聞こえてきた言葉に
「何、気になる? 俺の事」
素直にそう思ったから聞いた。
だけど、俺の言った言葉の何が気に入らなかったのか、
「ぬぁっ! なんないしっ! 気になんてなんないしっ!」
やたらとデカイ声で否定する有賀仁奈に、思わず笑ってしまった。
何だ、コイツ。
ちょっと面白いんだけど。
その後も何か言いたいのか口をパクパクさせてたけど、あの女の声が聞こえた気がしたから足早に学校を出た。

