「嫌じゃなくて。 こんな大怪我してんだから縫わなきゃ駄目だよ、きっと!」 「……大丈夫」 「はぁ? 大丈夫なわけないでしょ!?」 あたしがグルグルに巻いた体操服を、もう片方の手で器用に取る椎名冬夜。 ちょっ、何して…… そうして驚くあたしの目の前に、切れた掌を差し出す。 体操服には沢山の真っ赤な血がついている。 それは、きっと縫うほどの傷なはず。 それなのに、椎名冬夜の掌には引っかき傷のような痕しか残っていない。