体育館についた時には、既に繭が本性を出していて。
男達が体育館のドアの鍵を閉めまわっている時だった。
物陰に隠れた俺は携帯の録音ボタンを押す。
これで証拠にはなるか。
そう思い、出ようとしたら、
「ねぇ、仁奈ちゃん。私と取引しない?」
そう繭が言い出した言葉に足が止まってしまった。
取引?
だけど、足を止めたのは間違いで。
「あー、切れちゃった」
そう聞こえた声にカッとした。
アイツ、仁奈に何した!?
だけど……
「……冬夜君の事を諦めて、そばに居ないで」
俺を諦める?
そばに居ない?
苦しそうな繭の声に、再び足は止まる。
それは繭の声を聞いたからじゃない。
繭の言葉の言った意味のせい。
だって、この意味って。
まるで仁奈が俺を好きみたいじゃないか?

