「おい、落ち着けって。
……いてっ!」
話ならいくらでも聞いてやるよ。
俺が助けてやる。
そう思ったのに。
逃げようと暴れるから、仁奈の爪が俺の頬を掠った。
「っち。
お前いい加減にしとけよ?」
なんで俺じゃ駄目なわけ?
なんで俺に頼ってくんないの?
なんで俺に……
そう思った時には、もう遅かった。
俺は仁奈の唇に、自分自身の感情全てをぶつけちまったんだ。
別にキスは嫌いじゃない。
だけど、どちらかといえば首筋を吸う方が好きなだけ。
別にSEXは嫌いじゃない。
でも、どうちらかといえば血を飲む方が好きなだけ。
だから、俺自身が驚いた。
首筋を吸うより、血を飲むより。
なにより先に、キスしたことに。
だけど、そのキスはあまりにも気持ちよくて。
自制心がなくなった。
慣れていない仁奈のキスが、俺を欲情させる。

