【完】愛の血−超勝手な吸血鬼



「……離してっ」



声すらまともに出ない。

動く手で椎名冬夜を退けようと必死に押すのに、ビクともしてくれない。



「おい、落ち着けって。
……いてっ!」



あたしの顔を覗き込もうとした椎名冬夜の顔をかすった爪。

だけど、そんな事なんて関係なくて。


離して欲しい。

見ないで欲しい。


それだけで、あたしは精一杯動く。



「っち。
お前いい加減にしとけよ?」



そんな声が聞こえたと思った瞬間、あたしの唇に温かいものが触れた。



えっ?



頑張って動いていたあたしは止まり、目を見開く。

目の前にある椎名冬夜の顔を見て、キスしてるんだって気付いた。