「仁奈ちゃん、移動教室いっしょに行こ?」
柔らかく微笑む繭ちゃんに女のあたしですらドキドキしちゃう。
ボーッとするあたしを
「仁奈ちゃん?」
と、不安げな顔で覗き込む繭ちゃん。
「あ、ごめんごめん。
繭ちゃんがあまりにも綺麗から見惚れちゃった」
「えっ。
もう仁奈ちゃんたら!」
頬を赤く染めて恥ずかしがる繭ちゃんも、これまた可愛い。
世の中、不公平だよね。
こんな美人を生み出せるなら、あたしにも何かひとつくらい与えてくれてもいいじゃん。
「繭ちゃんって芸能界の仕事とかしてないの?」
「ええっ?
そんなのしてないよ」
「すればいいのにー!
繭ちゃんなら絶対人気出るよ」
「そんな事ないよ。
私なんてムリムリ!」
美人で性格も良いとか……完璧すぎるよね。
あたしも少しは可愛げをもたなきゃ駄目だよね。

