だけど、コイツ忘れてる?
「お前さ、この間の俺の言ったこと聞いてた?」
え? と首を傾げる仁奈。
「俺、近付くなっつたよな?」
ああー!!!
とでも叫びたそうな顔を見て
「今思い出しましたみたいな顔してんな。
まぁ別にいいけど」
そう溜息を零した。
コイツらしいっていうか、なんていうか。
もう別にどうでもいいけど。
今、仁奈を襲えるほどの体力は残ってないし。
無理矢理襲おうとも思わねぇし。
この間みたいな感覚は沸いてこない。
ただ、そばで、その心地のいい声を聴かせてて欲しい。
こういう感覚は、なんてーのかな。

