「こんな暑いとこで……何してんの?」
一瞬甘い香りがして。
綴じていた瞼をゆっくりと開けると、心配そうな顔した仁奈が居た。
だけど、俺との距離は微妙に開いている。
「……お前こそ何してんだよ」
掠れた声しか出せない。
大丈夫だって、見栄すらはれない。
「何って、あんたが居なくなったって聞いたから。
心配、して、あげたんでしょ」
またコイツは。
いつまで、俺の事を“あんた”とか“椎名冬夜”って呼ぶわけ?
「あんたじゃなくて、冬夜」
いい加減、ちゃんと呼べよな。
そう思って言ったのに、仁奈は眉間に皺を寄せて、ぷぅっと膨れた顔をほんのり赤くして、
「な、何言ってんのよ。こんな時にっ」
って。
確かにな(笑)

