ほねまであいして。


(なんだぁ…。私目当てにつけてきたんじゃないんだ)
 
心のどこかでがっかりしている自分に気付いた祥子は、そのまま返事もせずに黙っていた。
 
 『そうしたら、貴女を見かけたのでつい嬉しくて……』
 
祥子の気持ちを見透かしたように隼人が更に耳元に寄って呟いた。
 
体中の血液が頭に登るような感覚に祥子は少し隼人から離れると、斜め後ろに立つ隼人を見上げた。
 
 
どう応えるべきか分からなかった。
  
隼人とこれまで交わした言葉は、互いに二つ程度のセンテンスだけだった。
 
隼人は事務的に言葉を発し、祥子はそれに対して『お願いします』と『お世話になりました』だけだった。
 
それも一ヶ月前のことで、それから後は冷たい感じの拭えない待合室から、診察室への通路ですれ違いざまに会釈をするだけだった。