『やっと気付いてくれましたか?』
その時すでに、隼人の手は祥子の躯のどこにも触れていなかった。
『つけて来たってのは冗談ですよね?』
念のために用心深い振りをして問いただしてみる。
『どっちだと思います?』
その質問返しもどこか憎めない隼人のペースに祥子はすっかり飲まれてしまった。
呆れた振りをしてみたが、綻ぶ顔はどうにもならず祥子はまた車窓の外に視線を向けた。
窓に映る二つの姿は、電車のドアの前に仲良く二人で並ぶ恋人同士が映っているようにしか見えない。
戸惑いながらも、その姿を窓越しに見ていると嫌な気分ではなくなった。
『実は気の進まない飲み会で……すっかり遅刻なんだけど、ダチがしつこく電話してくるから仕方なく……』
隼人はまた不必要に祥子の耳元に近付いて小声で語り始めた。
