どこかで見た顔だったことで警戒心は薄れ、その台詞を言う物腰がどこか笑いを誘うツボを得ていて、祥子はその人物がはっきりとどこの誰であるかを認識する前に吹き出したのだ。
その後、すぐさま気を許した自分を戒め思考を巡らせた。
誰だっけ?
『片桐祥子さん……でしたよね』
その人の方は祥子をよく知っていて着いて来たわけで、その質問はあくまで形式的だった。
祥子が頷くまでもなく、彼は言葉を繋いだ。
『貴女のことなら骨の髄まで知ってる』
一瞬だけとてつもない不安が過ぎったが、その笑顔を見るとまた何故か警戒心が消える。
『先生しか触れないから悔しくてね』
その言葉に、人影の正体が掛かりつけの整形外科でレントゲン技師をしている隼人であることにやっと気付いて、祥子は『あっ』と小さく声を上げた。
