そんなありふれた平凡な祥子がその日、電車のなかで偶然隼人に出逢った。
すっかり外は暗くなり、電車の窓で祥子は自分の身なりを何度も確認していた。
その車窓に映る祥子の隣にすっと人影が並んだ。
ふと隣に顔を上げようとした祥子は身動きが取れなくなった。
人影が祥子の腰をそっと柔らかく撫で始めたからだ。
痴漢?
突然のことに言葉がすぐに出てこなかった。
さほど時間を空けずその人影が祥子の耳元に頭を寄せた。
そして、
『いつもお世話になります』
と茶目っ気のある物言いで呟いた。
えっ?知り合い?
悪い冗談?
誰?
ほんの少しホッとしたような感覚に身動きできなかった躯が動き、隣の人影を見上げた。
それが隼人だった。
ニッコリと祥子に笑いかけると隼人はさらに続けた。
『貴女のここに直接触れたくて……つけてきたんです』
腰に?
あまりに突飛で怒る気にもなれずに祥子は大声で吹き出した。
