ほねまであいして。

祥子は誰もいない部屋で自然に緩む頬に気付くが、自分を戒める必要もなく思い切り幸せを感じることにした。
 
(そうよ。隼人は絶対にわたしを愛してる)
 
 
あまりに幸せ過ぎると、そこに裏があるように思えたり疑う感情が芽生えたりするものかもしれない。
 
 
毎夜、慈しむように祥子の腰に触れる魔法のような指を持つ隼人の何を疑うというのだ。
 
目を閉じて、隼人の指先を思い出しながら祥子は大きく息を吸った。

全ての不安はきっと思い過ごしなのだ。
 
そう自分に言い聞かせる。

 
そんな祥子の幸福感を打ち破るように、不意にけたたましく携帯の着信メロディーが鳴り響く。
 
着信を知らせる画面は隼人の名前を浮かび上がらせていた。
 
 
『起きた?』
 
 いつもの限りなく柔らかい声だった。
 
『食べた?』
 
『うん。今から食べる。ありがとう』
 
 
『今日は遅くなるから、寝ててね。腰、痛い?帰ったらマッサージしてあげるから』
 
 
『わかったぁ』
 
 
優しい声とは裏腹に、祥子の言葉も終わらぬうちに一方的に隼人の気配は携帯から消えた。