始まりの理由なんてどうでもいい。
今はこうして隼人とほぼ同棲のように過ごしている。
好きだとも愛しているとも、ましてや結婚なんて言葉もない。
電車での突然のハプニングから祥子は思わぬブランド物を手にして、たった半年なのだからそれも仕方ないことかもしれない。
ほぼ一緒に生活しているとはいえ、まだ結婚を意識するには早過ぎる。
祥子はそう自分に言い聞かせていた。
土曜の朝はそれでも無性に不安になった。
隼人が仕事に出掛けた後、休日の祥子だけが一人部屋に残される土曜の朝。
くしゃみは止まる気配もなく、痛む腰を庇いながらベッドから抜け出した。
ベッド下に転がるティッシュの箱を見つけると、隼人の姿がないことをいいことに思い切り鼻をかんだ。
昨夜の営みの名残が散らばる部屋を見回して、祥子は幸せと不確かな不安を感じた。
くしゃみのたびにギクッと痛む腰に手を当てる。
隼人の慈しむような触れ方を真似て指を腰に這わせてみたが、自分の指では全く出来ない。
そうだ。
あの優しく念入りな隼人の愛撫が何よりも愛の証なのだから、不安に思うことは何もない。