「ここ、いったいどこなんだろう?」
 あたしは、ドレスのまま走っていた。
 どこを見渡しても、見たことのない景色だった。
「そういえば、携帯…」
 ドレス姿のあたしが携帯を持っているわけがなく…
 コンビニの前にある公衆電話があるけど、お金がなく電話できない…
 でも、早くしないと、追いかけられちゃう…
 急がないと…
 
 何分走ったんだろう?
 学校の近くに来たようだ…
 でも、あたしが知っている場所でも、方向音痴のあたしは、ちゃんとした場所にたどり着けるか…
 いま、家に行っても親がいるし…
 隣の陸斗の家に行っても、あたしのこと探してるだろうし…
「…らー!…いら!」
 どこからか、あたしのことを呼ぶ声が聞こえた。
 でも、下手に返事をすると、氷室先輩のところに連れてかれるかもしれないし…
 でも、その声はどんどん近くになってきた…
「愛羅!どこ行ったの?はやく、出てきて!亮君が待ってるわよ…」
 明らかにお母さんの声だ…
 出ていくわけにはいかない…
 隠れなきゃ!
 あたりを見渡し、近くにあった公園に身を隠した…
 
 5分くらいたっただろうか…
 お母さんの声は聞こえなくなった。
 でも、また違う声、でも心地いい声が聞こえてきた…
「愛羅!どこに行った!早く氷室から逃げよう…いるんだろ…なぁ…」
 陸斗の声だった。
 でも、どこにいるかはわからない…
 それでも、あたしは走り出した…
 
 陸斗は、覚えてるのかな?
 小さい頃に約束したよね?
「大きくなったら、結婚する」って。
 叶えよう!
 二人で、幸せな家庭を築こう!
 大丈夫、陸斗がいる…
 かわいい男の子と、女の子、2人生んで毎日幸せに暮らすの…
 最後の時まで、一緒だよ…
 絶対にはなれない…
 待ってて、今行くから…