tender dragon Ⅰ


「じゃあ、あの2人には無理ですね」

「だろ?だから俺が作るしかないんだよ」

めんどくさい、みたいな言い方してるけど、きっと本当はそんな風に思ってないんだろうな。


「あら、健太くんじゃないの」

安田さんが野菜を手に取って見比べていたとき、後ろから元気なおばさんが声をかけてきた。


「おばちゃん!今日もパート?」

「そうなのよー、健太くんは?もしかして、彼女さんとデート?」

人が良さそうなおばちゃんは、安田さんの肩をバシバシ叩きながらあたしを見る。


「違いますよ」

安田さんよりもずっとずっと早く否定したのはあたしだった。


「そんなに否定しなくてもいいのに……おばちゃん、この子は美波ちゃん。希龍と葉太の友達だよ」

「あら、そうなの?なによ、私てっきり健太くんの彼女さんかと思ったのに。」

「俺にこんな可愛い彼女が出来るわけないでしょ?」

あははは、なんて笑ってる2人は、近所のお友達みたいで何だかおもしろかった。