「葉太が作ったときは、皿の上に黒いものしか乗ってなくてさ。さすがに焦げて元が何か分からないようなもん食えないだろ?」
「無理ですね。普通食べないですよ。」
どうしてそんなに焦げるまで焼いちゃったの。
だから、任せられないわけだ。
「希龍が作ったときはもっと大変だったよ」
更に上がいるんだね…
「あいつの場合は野菜を切ることすら出来なかったからね。」
「…え?」
思わず耳を疑った。
野菜を切ることすら出来なかったの?
「包丁で指をザクッといっちゃって。流血騒ぎだったよ。希龍よりも葉太が騒いでてさ、あのときの希龍の迷惑そうな顔、思い出すと今でも笑える」
その光景が想像できてしまって、思わずあたしまで笑ってしまった。
自分の指が切れたのに、自分以上に騒ぐ葉太を見て、迷惑そうな顔をしている希龍くんが目に浮かぶ。



