tender dragon Ⅰ


「葉太が作ったときは、皿の上に黒いものしか乗ってなくてさ。さすがに焦げて元が何か分からないようなもん食えないだろ?」

「無理ですね。普通食べないですよ。」


どうしてそんなに焦げるまで焼いちゃったの。

だから、任せられないわけだ。


「希龍が作ったときはもっと大変だったよ」

更に上がいるんだね…


「あいつの場合は野菜を切ることすら出来なかったからね。」

「…え?」

思わず耳を疑った。

野菜を切ることすら出来なかったの?


「包丁で指をザクッといっちゃって。流血騒ぎだったよ。希龍よりも葉太が騒いでてさ、あのときの希龍の迷惑そうな顔、思い出すと今でも笑える」


その光景が想像できてしまって、思わずあたしまで笑ってしまった。

自分の指が切れたのに、自分以上に騒ぐ葉太を見て、迷惑そうな顔をしている希龍くんが目に浮かぶ。