tender dragon Ⅰ


「あいつらほんと好き嫌い激しいんだ。特に希龍。ちょっとでも嫌いなものが入ってたら「いらない」って言って食わねぇんだもん」

「ふふっ、それ聞きました。どれだけお腹好いてても食べないんですよね?」

「そうなんだよ。甘いものなら何でも食うんだけどなー」

あぁ、たしかに甘いもの好きそう。


「その逆で、葉太は甘いものが苦手で、辛いものが大好きだし。ほんとに真逆すぎて作る俺が一番大変だっつーの」


そういえば、あたしが一度カレーを作ったときもそうだった。

希龍くんは甘口で、葉太は辛口。

別々の鍋で作ったんだっけ。


「でも、あの中だと安田さんしか料理出来ないんですよね?」

「そうなんだよ。最初は当番制だったんだけど、あいつらに料理は無理だったみたいでさ」


話しながらも器用に、野菜を選んでカゴの中に入れていく安田さんは、完全に主婦だ。

ほんと、尊敬するよ。

自分の家族でもないのに、毎日こんな風に考えて料理してるなんて。

料理だけじゃない。

洗濯も掃除も、家の家事は全部安田さんがやってる。