「離して!」
あたしの言葉なんか聞こえてないみたいに、ズルズルと進んでいくこのナンパ男。
やばい、このまま進んだらホテル街に出ちゃう。そうなったら、もう何をしても助からない気がする。
初体験をこんな男に奪われてたまるか!
「やめてってば!ほんとに無理だから!」
まるであたしの声は口から発せられていないみたいだった。あたしの声は一切届いてない。
だんだん焦りが始める。
ナンパされたことがないわけじゃないけど、今まで全部断ってきたし、こんなにしつこい人はいなかった。
だからこういうとき、どうしていいのか分からなくなる。慣れてるわけでもないんだもん。
「ほんとにヤダ…!」
薄暗いこの通りには、人がいない。
いたとしても、きっとこの人みたいなチャラチャラした人たちだけだろう。



