希龍くんは優しいから、女の子から告白されたら断りきれないんだって。だから彼女がいっぱいいるんだって。

でも、違うよ。

だって、あんなに優しい声で名前を呼んでた。


「希龍、1人ずつに直接会って謝ったらしい。好きなやつが出来たから別れてほしいって。」

「好きな、人…?」


走りながら考えなくちゃならないから、酸欠と頭の整理でほんとに苦しい。

余裕なんて、蒼空くんにだってないはずなのに。どうして今話したんだろう。


「希龍は美波のこと、大切に想ってるよ。だから、迷惑だとか考えんな。もっと甘えていいんだよ。」

ねぇ、それって……

自惚れていいのかな…?

希龍くんの大切な人があたしなんだって、思ってもいいの?


希龍くんは女たらしなんかじゃないの?

ただ、誰よりも優しいだけで

誰も傷つけたくないだけなの?

葉太の言った通りだったの?


蒼空くんは急に立ち止まると、キョロキョロしてあたしを引っ張った。人が1人しか入れないようなところに、座らされる。


「蒼空くん…?」

「希龍に連絡しろ。助けてって言うんだ。」