「…そっか…、じゃあ仕方ないね。葉太、美波を送ってあげて」


どうして、怒らないの。

助けてあげてる女が、酷いことを言ってるのに。希龍くんは怒って当然なのに。

顔を上げた。

希龍くんと目が合う。


「じゃあ、俺帰るね」

どうして…

「2人とも気を付けて」

どうしてそんなに悲しい顔をするの?

どうして、泣きそうなの?


大きなエンジンの音が、耳をつんざく。

遠ざかっていく希龍くんを見つめた。


「ったく、泣くならあんなこと言うなよ。」

葉太がぶっきらぼうに言う。


ポタポタと落ちる涙。

頬を伝って、何度も何度も地面に落ちた。