「おい、美波…」

葉太があたしの名前を呼ぶ。


唇を噛み締めて耐える。

今泣いちゃダメなんだ。


「希龍くんには、送ってもらいたくない…」

ハッキリ言ったはずなのに、その声は自分でも分かるくらいに震えていた。


勝手に嫉妬して、怒って。

希龍くんは何も悪くないのに。

でも……

それでも、一緒にいたくなかった。


「…俺のこと、嫌い?」

酷いことを言ったのに、希龍くんの声はいつもと変わらなくて。優しい声。


嫌いじゃないよ。

嫌いになれるわけない。

だけど……


「…嫌い、大嫌い…」


もう、好きでいるのはやめるから。

希龍くんも、あたしを嫌いになってください。