「それに、心配しなくてもこの子は恋汰の息子だから大丈夫よ。きっとすぐ元気になる。だから、もう泣かないで」

ポタポタと落ちる涙は、止まることを知らない。視界がぼやけて実瑠さんが見えなかった。

そんなあたしの背中を、子供を慰めるように撫でてくれる。


「はい…っ」

もしもあたしに子供が出来て、その子供がこんなに傷だらけな姿を見たらこんな風に優しく笑えるだろうか。

自分だって辛いはずなのに、実瑠さんみたいに他人の子供を慰めてあげられるだろうか。

こんなに、強くなれるのかな。


「飲み物買ってくるわね」

「あ、あたし行きますっ」

「いいから、春斗のそばにいてあげて」

実瑠さんは立ち上がったあたしを座らせて、病室を出ていった。


ピッ、ピッ、という病院独特の音が一定のリズムを刻む。それは春斗が生きてる証。

静かな病室には、その音しかしない。