『…美波?』

「何で…、希龍くんが…」


それは紛れもなく希龍くんの声。あたしが聞き間違えるわけない。大好きな、優しい声。

焦りと、緊張。

波打つ心臓は、間違えて動いてる。


『…葉太、寝てるから。ごめんね、代わりに出ちゃって。葉太に用事?』

そうだ、春斗!


「あの…っ、春斗が来なくて…!」

『春斗が?』

「30分くらい前に連絡したっきり、電話にも出ないのっ」

『…1人?』

「蒼空くんが一緒だけど…」

『そう。じゃあ今から…「ガッシャーン!!」』


思わず携帯から耳を離した。

電話の向こうから、すごく大きな音が聞こえてきた。きっとそれは、何かが割れる音。


「希龍くん!?」

『…ごめんね美波、行けそうにないから、蒼空と安田の家に帰ってて。』

希龍くんはそれだけ言うと、あたしの返事なんか聞かずに電話を切った。

―プーッ、プーッ…