tender dragon Ⅰ


「最近あいつ不機嫌だから。」

「……そうなんだ…」

「毎日何してんのか知らねぇけど、女と会ってるって噂たってるし。喧嘩してヤケクソにでもなってんのかと思ったけど」

「してないよ、喧嘩なんて…」

ただ、あたしが希龍くんを忘れたいだけ。

好きだという感情を、なかったことにしたいだけ。それで避けてしまうだけ。


「…そ、ならいいけど。」


そこから蒼空くんは喋らなくなって、別に気まずいわけじゃないけど、考えた。

何を話そう?

さくら公園に着いても蒼空くんは喋らない。

ベンチに座って、春斗を待つ。

いつもは早すぎるくらいにこの場所に着いてる春斗が、今日に限って遅い。


「春斗、遅いね」

「先に帰る?」

「いやっ、待つよ」


あたしが待ちくたびれてると勘違いした蒼空くんは、当たり前みたいに言う。

迎えに来てもらってる身分でそんなこと…


「いつ連絡とった?」

「えっと……30分くらい前だけど、何で?」