歩いて数十分、駅の近くにある見慣れたカフェが見えてきた。
見たことのあるバイクも止まってる。
あれは葉太のバイクだ。
「あったあった。うちのトップは何してんだか」
「希龍くんらしくていいじゃない」
気まぐれな希龍くんなら、葉太に場所を伝えずにどこかに行ってしまってもおかしくない。
むしろ、希龍くんらしくていい。
「そうか?……あ、キーがねぇ。」
「希龍くんが持ってるんだよ」
「ここで待ってろ、とってくる。」
あたしも行く、と言いたかったけど、そういえばあたし今びしょ濡れだった。
カフェになんて入れないや。
「うん、分かった」
葉太の学ランを上から羽織ってるのに、外にいると少しだけ寒かった。
葉太がカフェに入っていく姿を見送って、ガラス張りになってるカフェをこっそり覗き見た。
希龍くん、いないかな。



