tender dragon Ⅰ


「…迷惑かけたくなかったの…」

「バカかお前。んなこと思うわけねぇだろ」


「……何で東高にいたの?」

「芽衣から電話来てさ、美波がいないから来てほしいって。そっから俺東高までダッシュ。」

「走ってきたの?」

「バイク、希龍が乗ってったから」


学校を出た後も、葉太はあたしの手をしっかり握ったままだった。暖かい葉太の手は、冷たいあたしの手には心地いい。

そのとき、葉太が豪快なくしゃみをして。


「あ、学ラン返すよ」

「いいって、美波は着てないと風邪引く」

「それ言ったら葉太だって…」

「俺は大丈夫なんだよ。」


学ラン脱ごうとすると、葉太はそれを頑なに拒否する。寒いくせに無理しちゃってさ。


「とりあえず、着てろよ」

「はーい……。ねぇ、希龍くんどこ行ったの?」

「…さぁ、知らねぇ」


葉太の様子からするとほんとに知らないみたいで、さほど興味もないみたいだった。

こうして葉太と並んで歩くのは初めて。

隣にいるのが不思議な感じだった。