tender dragon Ⅰ


「ほらっ、龍泉の!」

「葉太さん!」

「噂通りカッコいい…」

「あの子ほんとに関わってたんだね」


トイレを出ると、あたしが想像していたよりもたくさんの人が集まってて、あたしたち二人を見ている。

葉太を見て騒ぐ女の子。

物珍しそうに見に来た男子。

改めて葉太と生きてる世界が違うことを思い知らされる。痛いくらいに。


あたしよりも遥かに高い身長。

ふと見上げれば、真剣な表情をした葉太の横顔が目に入る。

整った顔は、きっと女子高生に人気で。


「何で言わねぇの?」

低くて掠れた声は、きっと怒ってるから。


玄関を出るまで集まっていた人混みを掻き分けて、ようやく外に出れたときにはもう、チャイムが鳴り終わっていた。

授業が始まってるのに教室に戻らない生徒を見て、教師は必死に怒鳴ってるけど全く意味がない。

葉太一人がいただけで、こうも夢中にさせてしまうんだからスゴい。