「ほらっ、龍泉の!」
「葉太さん!」
「噂通りカッコいい…」
「あの子ほんとに関わってたんだね」
トイレを出ると、あたしが想像していたよりもたくさんの人が集まってて、あたしたち二人を見ている。
葉太を見て騒ぐ女の子。
物珍しそうに見に来た男子。
改めて葉太と生きてる世界が違うことを思い知らされる。痛いくらいに。
あたしよりも遥かに高い身長。
ふと見上げれば、真剣な表情をした葉太の横顔が目に入る。
整った顔は、きっと女子高生に人気で。
「何で言わねぇの?」
低くて掠れた声は、きっと怒ってるから。
玄関を出るまで集まっていた人混みを掻き分けて、ようやく外に出れたときにはもう、チャイムが鳴り終わっていた。
授業が始まってるのに教室に戻らない生徒を見て、教師は必死に怒鳴ってるけど全く意味がない。
葉太一人がいただけで、こうも夢中にさせてしまうんだからスゴい。



