恐らく使い物にならなくなったであろう携帯が、水に浸されていく。

もう、連絡も出来ない。

「もう一回、かけてあげようか?」

「やっ…やめてよ…!」


水がバケツに溜まっていく音が、トイレに響く。それに混じって、こそこそ話す生徒の声も聞こえた。

人が集まってるんだ。


「どいて!」

「芽衣…?」


聞こえる声の中に、微かに聞こえた芽衣の声。

ダメだよ、バレちゃう。

今まで芽衣が隠してきたことが、あたしのせいで全部バレちゃうよ。


―バッシャーン!!


二度目の水の感覚なんて気にしていられなかった。そんなことよりも、頭の中は芽衣のことだけで。

またあたしのせいで…


『きゃああー!!』


頭の中でぐるぐる回っていた罪悪感や、ポタポタと垂れる滴の音なんて、あっという間にかき消された。

聞こえる悲鳴は、どうやら歓喜の声みたいだった。黄色い歓声のような、興奮した生徒たちの悲鳴。