考えたのはその事だけで、あたしの名前を呼ぶ加奈の声も気にならないくらい、走った。

おぼつかない足取りで必死に走った。

早く伝えなきゃ。そう思うと、息が苦しいなんて思っていられなかった。

みんなの力になれないなら、せめて迷惑をかけないようにしなくちゃならない。


「はぁ…っ……はぁ…」


でもどうやって?

話すなら全部話さなきゃいけなくなる。

また助けてもらうの?

結局、頼らなきゃ何もできないの?


そう考えると、自然と足は止まった。

芽衣に、自分でどうにかすると言ったばかりなのに。結局希龍くんたちの手を借りることになってしまう。


「そんなのダメだよ…」

加奈に殴られる痛みも、迷惑をかけないためだと思えば全然堪えられた。

そんなことよりも、気になるのはやっぱり希龍くんたちのことで。


希龍くんは優しいから、あたしが苛められてると分かればきっと助けてくれる。

葉太だって、きっと学校まで乗り込んできちゃうくらいに、怒っちゃうんじゃないかな?