あたしの言葉に、希龍くんは何も言わない。

顔を見たかったけど、見たくなくて顔をあげられなかった。下を見ると、希龍くんの靴が見える。

手に持つ花束は、色とりどりで綺麗に咲いている。結衣によく似合う、鮮やかな花だった。


「あたし忘れてないよ。全部覚えてるよ。結衣と最後に話したときのことも、目を開けない結衣の姿も。」


最後まで一緒にいたのは、紛れもなくあたし。

結衣を助けてあげられる可能性があったのも、あたし。


「だから、分かってるよ…」

希龍くんの言いたいことは分かってるよ。


「でも……希龍くんにそんなこと言われたくない…っ……来なきゃよかった…!」


結局希龍くんの顔を見れないまま、逃げてしまった。それでも希龍くんは、追いかけてこなかった。


―そのまま1週間も、希龍くんに会うことはなかった…