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胸が苦しくて。
この場所から逃げたしたかった。
希龍くんがあたしをジッと見つめる。
「美波…」
やだ。やだよ。
何も聞きたくない。話したくない。
だってもう、忘れなきゃ苦しいんだよ。
忘れたい、と思うことさえいけないの?
忘れようとすればするほど、あの日の出来事が鮮明に蘇る。
手の冷たさも
じわびわ広がる鮮血も
タイヤが擦れる嫌な音も
全部全部、あたしを苦しめる。
その度に、死にたくなった。
結衣がいなくなって、何度そんなことを考えただろう。でも結局あたしには、死ぬ勇気すらなかった。
結衣のところに行く勇気なんて、なかった。結衣の死を乗り越えて生きていく勇気も、なかった。
そんなことを考えていたら、何も乗り越えられないまま2年も経ってしまった。



