tender dragon Ⅰ


――結衣だけは失いたくなかったのに。


大切なものを失った。

心にポカンと穴が開いたみたいだった。


それから何をされたって、辛くなかった。

こんなの、結衣の痛みに比べればどうってことない。

だからもう、泣けなかった。

忘れたかった。

この胸の痛みも、あの日の赤色も、冷たくなった手の感触も。


――二度と目を開けない、結衣の綺麗な顔も。


誕生日は嫌い。

誕生日なんて来なくていい。


あたしの誕生日は、親友の命日だから。