――結衣だけは失いたくなかったのに。 大切なものを失った。 心にポカンと穴が開いたみたいだった。 それから何をされたって、辛くなかった。 こんなの、結衣の痛みに比べればどうってことない。 だからもう、泣けなかった。 忘れたかった。 この胸の痛みも、あの日の赤色も、冷たくなった手の感触も。 ――二度と目を開けない、結衣の綺麗な顔も。 誕生日は嫌い。 誕生日なんて来なくていい。 あたしの誕生日は、親友の命日だから。