tender dragon Ⅰ


「結衣…?」


あたしの位置からでも見えるその現場。

白い車が壁にぶつかっていた。

その先を見るのが、怖い。


――――何が待ってるの?


震える足にムチを打って、ゆっくりと近づく。

何度も人にぶつかった。

人だかりの向こうで「救急車!」と叫ぶ大きな声が聞こえた。


救急車が必要なの?

ねぇ、そこにいるの、結衣じゃないよね?

違うよね?


だって結衣は、ずっとあたしの傍にいてくれるはずだもん。あたしも、結衣を助けてあげなきゃいけないんだもん。


だから、結衣じゃないよね…?


横たわる制服姿の女の子。

あれ、あたしと同じ制服だ。

真っ赤に染まっていく真っ白なマフラーにも、じわじわと色を変えていく手袋にも、見覚えがあった。