tender dragon Ⅰ


どうしよう。

今結衣はどこにいるんだっけ。

あたし、行かなくちゃ。

ほら、助けるって決めたじゃない。

結衣のこと、助けなきゃ。


それでも足は動こうとしない。

情けない。怖くて、震えて、動けなかった。


『みな、み……っ』

「結衣っ?どこにいるのっ?」


あたしがそう言ったのと同時くらいだった。


『「キキィィィイ!!…ドンッ!!」』


携帯の向こうと、あたしが今立っている場所で聞こえた音が、重なった。

耳をつんざくような音。


プーッ、プーッ…

結衣との電話は、その音を最後に、切れてしまった……


タイヤが擦れるような音。

何かがぶつかるような音。

無機質な携帯の音。


どの音も、あたしの心臓の動きを早めるのには十分だった。とてつもなく、不快な音。