tender dragon Ⅰ


「暇だから、出てきちゃった。」

『そっか、じゃあ…』


ピタリと止まった結衣の声。

どうして急に喋らなくなったんだろう。

電話の向こうからは、何も聞こえない。


「結衣?」

あたしの呼び掛ける声に答えない。


そのときだった。

『っ…あ……はぁ…ぅ…』

結衣の苦しそうな声が聞こえてくる。


「っ結衣!」


何が何だか分からなくて、戸惑う。

さっきまで普通に話してたじゃない。

電話の向こうがどうなっているのか分からない。予測できない。でも、結衣が苦しんでいることに代わりはなかった。


「結衣っ、どうしたの?苦しい?大丈夫っ?」

その言葉にも反応はない。