大通りまで出てきて、はぁ、と息をつく。
久しぶりに走ったから、心臓は激しく波打っていて息は乱れていた。
そうだ、あたし結衣の家知らないや。
それに気づいたのは、歩き出そうとしたときだった。どっちに行けば良いのか分からなかったから。
迎えに行くって言ってたなぁ。
そんなことも忘れちゃうくらい、嬉しくて。結衣に会いたくて自然と足が動いていた。
きっと結衣に話したら、笑うんだろうなぁ。
何してんの、って。
着信履歴の一番上にある結衣の電話番号を押すと、プルルルと無機質な音が耳に残った。
数十秒して、「はい」と結衣が電話に出る。
「結衣、今どこ?」
『今?もうすぐ大通りだけど、何で?』
「あたしも大通りにいるの。」
案の定結衣は驚いたように"何で?"とあたしに聞く。
電話の向こうで笑ってるのが分かったから、ほんとのことを言うのが恥ずかしくて、言えなかった。



