結衣は「このあと家においで。」と言った。
親は共働きでいないから、家に1人でいるのは日常茶飯事。
だから、友達の家に遊びに行けることが嬉しくてたまらなかった。
「場所分かんないよ。」
「近くまで来たら電話して。迎えに行くから。」
そう言ってそれぞれ家に帰った。
当然、あたしの家には誰もいない。
少し寂しいけど、ずっとそうだったから不思議と慣れてしまっていた。
でも、その日は違った。
机の上に
"Happy Birthday!"
と書かれたメッセージカードとケーキが置いてある。家を出るときにはなかった、それらが自然と目に留まった。
「あ……今日誕生日だ…」
毎年祝ってくれていた友達が今はいないから、自分でも全く気づいていなかった。
結衣は、あたしの誕生日を祝うために家に呼んでくれたんだと、そのとき初めて気づいた。



