tender dragon Ⅰ


結衣は「このあと家においで。」と言った。

親は共働きでいないから、家に1人でいるのは日常茶飯事。

だから、友達の家に遊びに行けることが嬉しくてたまらなかった。


「場所分かんないよ。」

「近くまで来たら電話して。迎えに行くから。」


そう言ってそれぞれ家に帰った。

当然、あたしの家には誰もいない。

少し寂しいけど、ずっとそうだったから不思議と慣れてしまっていた。

でも、その日は違った。


机の上に

"Happy Birthday!"

と書かれたメッセージカードとケーキが置いてある。家を出るときにはなかった、それらが自然と目に留まった。


「あ……今日誕生日だ…」

毎年祝ってくれていた友達が今はいないから、自分でも全く気づいていなかった。

結衣は、あたしの誕生日を祝うために家に呼んでくれたんだと、そのとき初めて気づいた。