「希龍、お前最近狂羅見かけたか?」
「…いや、見てないけど。」
「あいつら最近1人も姿見せねぇ。美波のこと、そんなに簡単に引き下がると思うか?」
急にあたしの名前が出てきてビックリした。
パッと顔を上げると、真剣な表情をした希龍くんと目が合う。
何となく気まずくて、思わず顔を背けてしまった。不自然だっただろう。
でも、意識するとやっぱり、気まずい。
「……噂がハッキリしてきてる。噂の出所は分からないけど、探してることに変わりはない。あいつらが引き下がってるわけじゃないよ。」
芽衣が言ってたことだ。
少しずつ、それでも確実にあたしに近づいてきてる。”噂はあくまで噂”なんて、そんなこともう思っていられない。
油断できない状況なんだ。



